1993年、滋賀県犬上郡多賀町四手の、現在『多賀町立博物館(「あけぼのパーク多賀」内)』があるところから2kmほど離れた造成地で、約180万年前の昔の琵琶湖にたまった粘土の中から,アケボノゾウというゾウの全身の骨格の化石が発見されました。
多賀町のアケボノゾウ化石は、全国でもっとも完全に近い形で発見されました。そればかりか、アケボノゾウを含むグループであるステゴドン科のゾウ化石では、アジアで2番目によくそろった骨格です。そのため、アケボノゾウのからだの特徴がよく分かってきました。
当館の中庭には、このアケボノゾウが見つかった状態を産状ジオラマで再現し(下の写真)、 ホールでは,組み立てた骨格と生体復元模型を展示しています(上の写真)。また,展示室内では,見つかった骨化石の大部分を展示しています。
◇アケボノゾウについてくわしくはこちら
◆アケボノゾウ復元骨格と生体復元模型
◆産状ジオラマ
地形や植物、けものや鳥、昆虫などの動物など、多賀町とその周辺の現在の自然を紹介するコーナーです。
多賀町は、鈴鹿山脈の北東部とその山麓を占めていて、その中には石灰岩地帯を多く含み、崖の多い険しい地形です。また、昔の琵琶湖にたまった地層である古琵琶湖層でできた丘陵地や、現在のびわ湖へと続く平野部もあります。このように、変化に富んだ地形、また石灰岩地帯が多いということ、表日本植物区、裏日本植物区の境界にあたっていることもあり、植物や動物が豊富です。
展示では、ニホンカモシカ、イノシシ、キツネ、ムササビなどの動物のはく製を配置したジオラマやチョウ、トンボなどの昆虫や植物の実物標本で、多賀町の自然の豊かさを感じられるようにしています。
◆「多賀の山々」のジオラマ。石灰岩の急なガケを表現しました。
◆「人里の自然」のジオラマ。もっといろいろな動物がいます。
◆昆虫や植物の実物展示
鍾乳洞などを含むカルスト地形やそこに住む生き物を紹介するコーナーです。
多賀町内の石灰岩の中から見つかる化石のコーナーです。
展示室では、国の天然記念物アケボノゾウ化石多賀標本の全身骨格化石の実物を展示しています。
また、瀬戸内海産のアケボノゾウ頭蓋骨化石の複製や手で動かしてみることのできるアケボノゾウの前肢の骨格なども展示しています。
なお、ホールには、この多賀町産のアケボノゾウ化石の複製を組み立てた骨格や、生体復元模型、産出状況模型があります。
約180万年前の古琵琶湖層から見つかったシカ類の化石です。多賀町四手の古琵琶湖層からはアケボノゾウだけでなく、これまでに少なくとも14頭分の鹿の化石が発見されています。その中には日本でも珍しい全身骨格の化石が含まれています。これらの化石ジカは体の大きさがわずかに大きい他は、現在のニホンジカとよく似た体つきをしていました。しかし、角の特徴はニホンジカのものとは異なっていて、現在東南アジアなどに生息しているルサジカやアクシスジカと近い種類ではないかと考えられます。
◆多賀町四手で見つかったシカの化石
ほぼ全身の化石が見つかったメスのシカの化石(写真左)
オスのシカの頭蓋の化石(写真右下)
◆多賀の化石ジカの特徴
◆日本各地の化石ジカの複製も展示しています.
・約150万年前のカズサジカ(長崎県産 写真左上)
・約100万年前のシカマシフゾウ(兵庫県産 写真右下)
・約14万年前のニホンムカシジカ(千葉県産 写真左下)
昔の琵琶湖にたまった地層とそこから見つかる化石を紹介するコーナーです。
多賀町でアケボノゾウやシカの化石が出てくる地層は古琵琶湖層と呼ばれていて、多賀町では主に粘土や砂礫層からなっています。これは、昔の琵琶湖のへこみを埋め立ててたまったものです。 現在では琵琶湖とは離れてしまっている多賀町で琵琶湖の地層が見られるのは、琵琶湖のへこみが約400万年もかけて南から北へと移動しているからです。
多賀町で見られる古琵琶湖層はそのなかでも蒲生累層と呼ばれる地層で、今から約200万年ほど前のものです。多賀町四手の古琵琶湖層からは、アケボノゾウやシカだけでなく、カメや貝、植物など、いろいろな化石が出てきます。
◆古琵琶湖層から出てきたいろいろな化石や、地層そのものをはぎとってきたものを展示しています。
多賀町に流れる芹川で発見されたナウマンゾウの化石を紹介するコーナーです。
多賀町の遺跡から出土した土器や多賀大社に伝わる古文書・参詣曼荼羅(複製品)などを紹介するコーナーです。